第95章

周防天華は顔を上げた。途端に目の縁が赤く染まり、声には泣き濡れた震えが混じる。

「兄さん、私じゃないよ……。あの人がかわいそうで、少しだけ庇ってあげたかっただけなのに……まさか、まさかあの人が、お姉ちゃんを殺そうとするなんて……」

数言で、矛先をまるごと他人へ押しつける。

古川礼希も前へ出て、疑うように言った。

「そのとき、おまえが走り込んで古川朱那を押しただろ。あれは何なんだ?」

「違うっ!」

周防天華は甲高い声で反射的に否定し、涙が「さっ」と頬を伝った。

「礼希兄さん、どうしてそんなこと言うの……? 私、怖くて……上から何か落ちてくるのが見えて、頭が真っ白で……ただ、お姉ち...

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