第99章

古川朱那は前世、精神病院での十年のあいだに、幾度となく傷の処置をする場面に遭遇してきた。だからこそ、いま同じ状況に直面しても、不思議なほど取り乱さなかった。

彼女は身を翻して救急箱を取り、清潔なタオルとハサミも用意する。

「少し痛いかもしれない。……我慢して」

小さく告げると、朱那はハサミで傷口の周りの布を慎重に切り開いた。

露わになったのは、骨が覗きそうなほど深い刃傷。皮膚と肉がめくれ、どくどくと血が溢れている。

朱那は息を呑んだ。

――誰かにやられたの? ……こんなに深く。

あとほんの少し下、心臓寄りに入っていたら、命がなかったかもしれない。

考え込んでいる暇はない。朱那...

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