第7章

神谷亮は、巨大な窓の前に立ったまま、美月に背を向けていた。指先が、とん、とん、と神経質に窓枠を叩いている。

美月の率直な問いかけに、彼の肩が一瞬こわばったが、すぐにいつもの冷徹な経営者の仮面を貼り付けた。

「神谷さん。悠太の音楽の才能を、どうお考えですか」

美月の静かな問いに、亮の指の動きがぴたりと止まる。彼はうつむき、しばしの沈黙の後、吐き出すように言った。

「悠太、か」

低く繰り返した声には、自嘲の色が滲んでいた。

「……私はずっと、あの子は出来損ないだと思っていた。あの子が、君の音楽への期待に応えられなかったから、君は耐えきれずに出て行ったのだろう、と」

その言...

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