第109章

幸村蓮二の視線が成田七海の顔に落ちた瞬間、脳裏にあの子どもの灰色がかった蒼白い顔がよぎった。喉仏がごくりと上下し、声は乾ききって掠れる。

『あの子……あいつは……』

言い切れない言葉は、とっくに成田七海に見透かされていた。

いつも冷静な男が、こんな顔をして、言い淀む。ここまで来て、わからないはずがない。

胸の底がすとんと沈み、視界がふっと暗転する。成田七海は前触れもなく崩れ落ちた。

どんっ!

鈍い音のあと、現場は一気に騒然となる。

ベントレーが病院の入口に急停車した。タイヤが止まるのと同時に、前席のボディーガードが降りてドアに手を伸ばす。

だが、小林光は自分でドアを開けた。立...

ログインして続きを読む