第110章

この急変は誰の予想も外れていた。――ただ一人、小林光だけを除いて。

彼は終始にこやかで、その笑みには隠しようもない得意げな色が混じっている。視線がふと脇へ流れるたび、崎原孝樹に向けられるのは、露骨な侮蔑だった。

もっとも、崎原孝樹には見えない。目を閉じたまま、顔はボディーガードと幸村陸斗のいる方へ向いている。さっき、あちらから声がした。音に敏い盲人にとって、まず意識が向くのは他人の視線ではなく、声だ。

幸村陸斗の声は、どこか覚えがある。さらに相手が自分を「幸村のお爺さん」と名乗ったことで、胸の奥に薄い確信が芽生えた。

『幸村陸斗?』

問いかけが落ちる。

幸村陸斗はゆっくり首を回し...

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