第116章

そういう事情を知っているからこそ、小林暁の小林ゆきに対する態度は、最初から冷ややかだった。

表情は淡々としていて、ゆきの身なりを一瞥しただけで――彼女も産んだのだと察し、眉をひそめる。自分の推測は間違っていなかった。そう確信した。

けれど……。

暁の視線がその背後へ滑る。赤ん坊を抱いた人影は見当たらない。そこにいたのは、にこにこと笑う早村正人だけだった。

早村正人のことは、暁もよく知っている。自分の腎臓を奪った医師で、その後も何度も血を抜いた男だ。

以前は、ただ規則通りに動く医者にすぎないと思っていた。だが今、ゆきの後ろに従う姿を見れば――もう、わからないはずがない。

胸の奥がひ...

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