第123章

火の勢いは凄まじく、崎原時男が駆けつけた頃には、黒煙が空を塗り潰すように病院本館の上に滞留していた。

消防車は建物の下にずらりと並び、窓という窓へ向けて太い放水が叩き込まれている。

院内の人間はすでに全員避難済みだった。

産科だけに、看護師や介助員が赤ん坊を左右の腕に抱えて走り回っている。保育器ごと押し出されてくる子もいた。

小さな広場には泣き声と怒鳴り声が渦を巻き、何を言っているのか判然としない。

崎原時男の耳に入るのは、ただの騒音だった。煙が低く沈み、視界も音も濁る。その中でひときわ目立つのは、逃げ出す人々に何度もはね上げられる、病院入口ののれんのようなカーテンだけ。

目で追...

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