第127章

幸村陸斗は跳ね起きると、鉄扉の前へ駆け寄った。角を曲がって姿を現した人物を見た瞬間、瞳がぱっと輝き、口元が思わずほどける。

『崎原様!』

崎原時男は淡く目を上げただけだった。幸村陸斗のような高揚も歓喜もない。感情は深く沈められ、口角にさえ一切の弧がない。

黒のスーツ。相変わらず仕立てのいい、控えめな織り柄の高級生地だが、この色はこれまで見たことがなかった。黒が輪郭を引き締め、背筋の通った体躯をいっそう際立たせる。雌雄の境目が曖昧なほど整った顔立ちさえ、どこか硬質に見えた。

『手間をかけた』

崎原時男は黄色い線の外で足を止め、案内役が幸村陸斗を解放するのを眺めながら、淡々と礼を述べた...

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