第147章

M市の夏の夕暮れは、相変わらずむっとするほど蒸し暑かった。

崎原孝樹は電話を切ると、口元に薄い笑みを浮かべたまま身を翻し、手を伸ばす。指先が明の腕に触れ、軽く力を込めると、鼻で笑った。

『決まりだ。明日、会社に顔出してくる』

明もつられて笑う。

『それはよかった。中に入れさえすれば、チャンスはいくらでもある』

『ほらな。あいつら、俺を本気で切り捨てるわけがないんだ』

崎原孝樹は笑った。けれど、その笑いにはどこか無理が混じっていた。明は気づかない。ただ、興奮しているのだと思った。

二人の会話には、隠しようのない喜びが満ちていた。

そのとき、誰かが近づいてくる。

ぱた、ぱた、と...

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