第148章

崎原孝樹の住まいを出た小林ゆきは、たしかに腹を立てていた。けれど、その怒りは長くは続かない。

今の彼女には、頼れるものがない。崎原時男は、彼女が「崎原孝樹側の人間」だと見抜いた時点で、もう信用していない。ここで崎原孝樹とまで決裂したら――本当に、ひとりぼっちだ。

孝樹の非情さに憤りはする。だが、ゆきだって同じではないか。

アメリカから帰国したのは、何のためだった。小林暁を押しのけて、自分が崎原の奥さんになるためだ。そこに孝樹の焚きつけがあったとしても、選んだのは自分自身。

計画が潰れた今、これからの動きはすべて、最後の悪あがきにすぎない。

――利用し合っているだけ。

ゆきは涙を拭...

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