第17章
崎原時男の口から、こんな調子を聞くのはほとんど初めてだった。小林ゆきは胸がざわつき、言葉も途切れ途切れになる。
「わ、私……ちが……わたし……」
最後は、声が喉で詰まってしまう。
泣く芝居なんて、小林ゆきには朝飯前だ。目元は赤くもないのに、すすり泣きだけが先に出る。
崎原時男は、普段ならその手に弱い。
だが今日は違った。電話越しの嗚咽を聞くほどに、胸の奥へ苛立ちが積もっていき、思わず舌打ちが漏れる。すると小林ゆきの泣き声は、ぴたりと止まった。
「写真はもう揉み消した。二度と余計な真似をするな」
崎原時男はこめかみを指で揉む。だが不快感は、少しも引かなかった。
「俺は小林暁とま...
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