第24章

女は崎原時男の視線を受けながら顔を背けた。目尻を涙がすっと伝い、整った眉がきゅっと寄っている。何かを必死に堪えているみたいに。

「……いや」

その返事に、崎原時男は少しも驚かなかった。

眉を上げ、口元だけで笑う。

「いい子だ。今は、来るタイミングじゃない」

いつ薬を止めたのか――そんなこと、崎原時男は覚えていない。どうせ、女が日常的に口にしているものだ。

胎児の奇形。

崎原の家に、欠けた子は要らない。

小林暁は近づいてくる彼を押し返し、歯を食いしばった。

「……だから、いやだって言った」

崎原時男の瞳が沈む。表情は大して変わらないのに、そこに滲むのは露骨な苛立ちだった。

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