第34章

崎原時男の距離の取り方は、小林ゆきの目には「遠慮」なんかじゃなく、露骨な「嫌悪」に映った。半月ほど前の見舞いでは、崎原時男のほうから小林暁に腕を組ませていたじゃない。なのに、どうして自分相手だと避けるの?

悔しさが喉の奥に絡みつき、伏せたまつげの陰で、ぎらりと凶い光が走る。ゆきはわざと足元をふらつかせると、

「きゃっ……」

情けない声を上げ、崎原時男へ倒れ込んだ。

がっしりした男の腕が即座に伸び、彼女の身体をしっかり受け止める。

頬が熱くなる。ゆきは甘えるように唇を開いた。

「時男……」

言いかけた瞬間、頭上から冷えた声が落ちてきた。

「ちゃんと立て」

次いで、彼の体温と一...

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