第71章

そんな突拍子もない、薄気味悪い発想と認識がふいに頭をもたげて、崎原時男の背中に冷たい汗がにじんだ。

――気味が悪い。

伏し目がちになり、胸の奥は恐怖と、言いようのない違和感でざわつく。

自分は、いったいどうしたんだ。

内側の揺れなど誰にも悟らせまいと、崎原時男は口元をまっすぐに引き結び、できる限り平然とした声を作った。

『仕事が終わったら迎えに来る』

男は足早にその場を離れた。まるで逃げるみたいに。

小林暁はそれを見送り、ようやく息をつく。

廊下を急ぎ足で抜け、エレベーターホールに辿り着いてから、崎原時男はやっと少しだけ落ち着きを取り戻した。

視線を落とし、腕を自然に下ろす...

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