第87章

その一瞥だけで、藤原空人は相手が浅坂お爺さんの長男――浅坂安信だと見抜いた。

年は三十。十二の頃から薬で命をつないできたらしく、ここ最近はさらに体が弱っているという。よほど大事な用でもない限り、外には出ない――そんな噂の人物だ。

『浅坂様』

藤原空人は相手に軽く会釈し、落ち着いた声で挨拶した。

浅坂安信も同じように頷いたが、空人のことは知らない。横にいた崎原時男が補足する。

『藤原空人です。藤原嘉人さんの弟で』

最初、浅坂安信は「藤原空人」という名に特に反応を示さなかった。だが「藤原嘉人」と聞いた瞬間、目の奥に理解の色が差す。口元に笑みを浮かべた。

『藤原様。どうも』

握手を...

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