第91章

約束の時間ぴったりに、早村茜と浅坂礼子は、目立たない小さな喫茶店へ滑り込むように入った。

二人ともそれなりに変装してきたつもりだった。家にあるいちばん地味な服を引っ張り出し、さりげなく――そのはずなのに、通りすがりの視線は何度も引っかかり、ひそひそ声まで混じってくる。

『あれ、シャネルじゃない? バッグも……』

『もう一人、アルマーニ着てる。どこのお嬢さまの外出だよ』

囁きが耳に刺さり、茜は思わずサングラスをさらに深く押し下げた。礼子もそれに倣い、頭巾をぐいと引っ張って顔を隠す。

『……バレるかな』礼子が茜に寄り、声を落とす。

サングラス越しの茜は少しだけ大胆だった。礼子がじわじ...

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