第94章

フェリーの停泊場所は合海山荘のすぐ近く――とはいっても、それはあくまで直線距離の話だ。

桟橋は山の麓にある。山へ入る道路をいったん抜け、脇の細い道へ折れてから海沿いの道をぐるりと回り、さらに三十分ほど走ってようやく渡し場に着く。

小林暁は車内で少し眠ってしまった。

運転しているのは浅坂家が寄こした運転手で、腕は確かだった。くねくねと曲がる山道でも、車内が揺れる気配すらない。

後部座席の前寄りには藤原空人と浅坂安信が並んで座っている。道中ほとんど会話はなかった。話すことがないのか、それとも暁の眠りを邪魔したくないのか――どちらとも取れる沈黙だった。

藤原空人が言っていた通り、今回フェ...

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