100、
白川蘭視点
目を開けたとき、隣はもう空っぽだった。
布団の中には、まだかすかな体温が残っている。手探りでスマホを掴んで確認すると、もう10時近い。
昨夜は明け方まで散々だったせいか、我ながら深く眠っていたらしい。
起き上がると頭がぼんやりして、髪もひどい有様だ。
上着を羽織ってスリッパのまま外へ出る。リビングに足を踏み入れた瞬間、キッチンからバターの香りがふわりと流れてきた。
後藤正樹が、こちらに背を向けて作業台の前に立っている。
暖房がよく効いた室内で、彼は黒い薄手のニット一枚。袖を肘までまくり上げ、鍛えられた前腕がのぞいていた。
日頃の訓練のせいか、立ち姿がやけに真っすぐ...
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