101、

白川蘭視点

あの頃、後藤快斗がいきなり私のところに来て、「いちばん好きな花は何?」って聞いてきた。続けて、「なんであの彫刻家が好きなの?」とも。

答えた途端、彼の顔色がすっと曇ったのに、理由だけは最後まで教えてくれなかった。

今思えば、負けたのが悔しくて認めたくなかったんだろう。

私は皿のラムチョップを黙々と切り分けながら、胸が痛むというより、昔の自分がちょっと滑稽に思えた。

あの頃の後藤快斗の癖なら、たぶん何ページでも書けた。なのに、私の「いちばん好きなもの」が何かは、後藤正樹のほうがよく知っている。

「そりゃ言えないよね」私はくすっと笑う。「たぶん、恥ずかしかったんだと思う」...

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