106、

白川蘭視点

「白川蘭」

彼は私をまっすぐ見た。

「こういうの、俺は準備が得意じゃない。花は高坂綾乃が選んで、陸川英二が運んでくれた。本当は昨夜のうちに飾りつけるつもりだったんだけど、ちょっと想定外があって」

後藤正樹が箱を開ける。中に入っていたのは、驚くほどシンプルな指輪だった。

「俺は、毎回きっちり時間どおりに帰れるとは言えない。全部をお前に話せるとも約束できない。でも、できる限り無事でいる。お前の仕事を尊重する。お前がやりたい彫刻には、俺も付き合う」

一拍置いて、彼は言った。

「白川蘭。これから先、俺が自分で選べる日々は、全部お前に渡したい」

喉が鳴る。

「……結婚して...

ログインして続きを読む