107、

白川蘭視点

あの任務は、十一日間続いた。

電話は来なかった。七日目に、東山英樹から代わりに届いた短いメッセージが一通――「異常なし」。

十一日目の夜。私はまだ作業場で作品の手入れをしていて、鍵の回る音を聞いた。

後藤正樹が、夜気をまとったまま入ってくる。玄関に立ち、こちらを見た。

リビングの灯りは消していない。ダイニングテーブルには冷めた洋食。窓辺の女神の胸像は、光を受けて柔らかな輪郭を浮かべている。

彼は荷物を置き、私に手を差し出した。

「蘭、ただいま」

私は駆け寄って、抱きついた。

その瞬間、ようやく分かった。家は、広さじゃない。

出ていくときに「行ってきます」と言う...

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