11、

白川蘭視点

彼女は目に痛いほど真っ赤な薔薇の花束を抱えたまま、小走りで後藤快斗の前へ駆け寄った。

後藤快斗はふっと足を止め、表情が一瞬で固まる。けれど、避けようとはしなかった。

小林優里がその巨大な花束を彼の腕の中に押し込み、両腕を広げて、首にぎゅっとしがみつく。

客席が一秒、静まり返った。次の瞬間、耳をつんざくような冷やかしの歓声が爆発する。

さっき後藤快斗が口にした「俺の蘭に」――その一言を、会場中が聞いていた。

ファンの歓声はさらに狂ったように膨れ上がる。たぶん、さっきの曲を彼が私に向けて歌ったなんて、誰も知らないまま。

「キスしろ!」誰かが先に叫んだ。

続いて、津波み...

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