12、
白川蘭視点
裏路地は、しんと静まり返っていた。湿った空気が肌にまとわりつき、息苦しい。
ゴミ箱から立ちのぼる酸っぱい腐臭に、タバコの煙が混じって、むわっと鼻の奥まで入り込んでくる。
「結婚? お前、正気か?」
後藤快斗がようやく口を開いた。どこか笑っているような声音で。
「俺と蘭は一緒に育ったんだぞ。俺にとって蘭は……妹みたいなもんだ」
妹。
――この数年のそばにいた時間も、私が差し出してきたものも。
彼の中では「妹の世話」程度でしかなかったんだ。
小林優里は引かなかった。
「じゃあ、なんで彼女を彼女にしたの? 快斗、私のことナメてんの?」
「ナメてねえよ。……お前さ、...
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