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白川蘭視点

サロンは山の中腹にひっそりと佇んでいて、車を停めてから正門までは徒歩で5分ほど歩く必要があった。

雨は上がったのに、山あいの霧はまだ居座ったまま。石段には青苔がびっしりと張りつき、じっとり濡れていて足を取られやすい。

後藤正樹が低い声で言う。

「足元、気をつけろ。滑ったら洒落にならん」

林の合間に隠れるようなサロンは、視界いっぱいの緑に包まれている。品があって、肩の力がふっと抜ける感じがした。

扉をくぐった瞬間、挽きたてのコーヒーの香りがふわりと押し寄せる。深くて丸い、長く尾を引く芳醇さ。空間そのものに、心地よい余韻が染み込んでいた。

私たちは窓際のソファへ案内され...

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