54、

白川蘭視点

「別に、そんなこと言ってない。勝手に決めつけないで」

反射的に言い返してしまう。

後藤正樹はデッキチェアにだらりと身を預けていた。白いシャツに短パン。木漏れ日の細かな光が、肩や膝にまだらに落ちている。

彼は雑誌のページから目を離さないまま、淡々と告げた。

「さっきの泳ぎ、悪くなかった」

私の泳ぎは、全部――後藤正樹に教わった。

七歳の夏。後藤快斗と一緒に泳ぎを習った。

快斗は飲み込みが早くて、すぐに水の中をするすると泳げるようになったのに、私はというと、いつも水を飲んでしまって、息を止めることすら満足にできなかった。

普段はどこか冷めて見える後藤正樹が、そのとき...

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