69、

白川蘭視点

昨夜、私が使ったままのカップ。洗い忘れていた。

彼の視線に気づいて、私は言い訳をする。

「昨日、ネットショップの新作アップで徹夜しちゃって。気づいたら2時で、もうヘトヘトで……ここに置いたまま、洗うの忘れてた」

そう言い終えると、私は自然にカップを手に取り、背を向けてシンクへ向かった。

じゃあ、と水を出すと、ざあっと大きな音が立つ。俯いたまま、顔には何の動揺も浮かべない。

洗い終えて戻ると、後藤正樹がふっと目を上げた。

「蘭。俺の頼んだものは?」

作業台へ行き、収納棚からケースをひとつ取り出して差し出す。

中身なんて空っぽで、持てば羽みたいに軽い。それでも彼は、...

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