70、

後藤正樹視点

腕の中の彼女は、あたたかくて柔らかい。胸にぴたりと貼りつくほど、近い。

抱き締める腕に力を込めるたび、急いだ鼓動がはっきり伝わってきた。

この日を、どれだけ待っただろう。

嫉妬と劣等感に削られ続けて、気が狂いそうだった。……いや、ほとんど狂っていたのかもしれない。

それなのに今、彼女は現実に俺を抱いている。

両腕を俺の首に回し、身体の重さを丸ごと預けて。

その温もりを噛みしめる間もなく、違和感が走った。

鎖骨にかかる吐息が、妙に熱い。灼けるみたいに。

腕を少し緩めて、覗き込む。

灯りの下、蘭の頬は不自然に赤く、呼吸も荒い。

俺は手の甲で額に触れた。

……...

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