72、

後藤正樹視点

身体が、頭より先に動いた。

俺は勢いよく振り向き、スイーツ店のガラス扉を押し開けて外へ飛び出す。

道路の向こう。俺のオフロード車の脇で、フードを被った痩せ長い男が、蘭のワンショルダーのバッグを執拗に引っ張っていた。

さっきまで車のそばで俺を待っていた蘭は、引きずられて足を取られ、車のドアに肩を強くぶつける。

ドン、と鈍い音。

「離せよ。殺すぞ」

男は声を落として怒鳴った。抑えた声の奥に、理性の切れた獣みたいな狂気が滲む。

「離さない!」

蘭は歯を食いしばり、ストラップを両手で死守した。

男が苛立ったように舌打ちし、ポケットから黒い塊を引き抜く。次の瞬間、それ...

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