80、

白川蘭視点

心臓が暴れていた。深海へ沈むみたいに息が詰まって、なのに胸の奥だけが熱い。

指先がかすかに震える。考える暇なんてなかった。腕の中の薔薇を落とすように手放し、背伸びして、彼の制服の襟元をぎゅっと掴む。顔を上げ、そのまま唇を重ねた。

あたたかくて、柔らかい。

後藤正樹の身体が、ぴくりと固まる。

彼は目を閉じ、熱い息をひとつ吐き出すと、腕を上げて壁面の曇りガラス切り替えスイッチを押した。

透明だったガラスが一瞬で白く曇り、外からの視線を完全に遮断する。

次の瞬間、彼は私を横抱きにして持ち上げ、すぐ脇の操作台の天板へ、そっと下ろした。

眼鏡を外して無造作に放り、掌で私の後...

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