84、

後藤快斗視点

俺が1階のカフェスペースから出た瞬間だった。顔を上げると、白川蘭が上階から駆け下りてくるのが見えた。足取りは速いのにふらついていて、まるで何かから逃げるみたいに。

母さんはずっとリビングにいた。蘭の姿を見た途端、ぱっと立ち上がって声をかけようとする。

けれど蘭は、母さんが視界に入っていないみたいに、まっすぐ玄関へ向かった。目も合わせない。止まらない。

「母さん、蘭どうした? 様子おかしいだろ」

俺がそう聞くと、母さんは小さく首を振るだけで、何も言わなかった。

胸の奥がひやりとする。考えるより先に、俺は外へ飛び出していた。

蘭はもう庭の正門の手前まで来ていて、今にも...

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