87、

白川蘭視点

点滴の袋を見つめたまま、かすれた声で言った。

「これ、1本だけ? 終わったら帰れる?」

後藤快斗はこくりとうなずき、気まずそうに頭をかいた。

「出るの急ぎすぎてさ。蘭のスマホ、持ってくるの忘れた」

胸の奥がひゅっと縮む。

半日も経っている。通知なんて山ほど溜まっているに決まってる。美術展の業務連絡グループも、未読が地獄みたいになってるはずだ。

考えれば考えるほど苛立ちが増して、私は反射的に手を伸ばし、点滴の速度を上げようとした。

「速すぎると体がもたない。めまいもするし、動悸も出る」

後藤快斗が私の手首をつかむ。やさしいのに、どこか困ったみたいな声。

「焦るな...

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