90、

後藤正樹視点

あの夏のことは、今でもはっきり覚えている。

後藤快斗がプールの深いほうで足をつって、そのまま溺れかけた。俺はちょうど電話が入って、ほんの一瞬、目を離した――それだけで、取り返しのつかないところまで行きかけた。

あの日、みんなが俺を責めた。

「弟をちゃんと見ていなかった」って。

俺だって、まだ子どもみたいな年だったのに。

それでも全部を飲み込んで、言い訳ひとつしなかった。

白川蘭が、そっと言った。

「私、よく覚えてる。お昼寝から起きたら周りがすごく騒がしくて……その中で、正樹くんだけが黙って立ってた。あのとき、すごく孤独だったんだろうなって、分かった」

俺は頷い...

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