96、

後藤正樹視点

外は吹雪だった。雪が横殴りに舞い、街そのものを白く塗りつぶしていく。

スーツケースを提げ、階段を下りようとしたところで、背後から白川おばさんの声が飛んできた。

「こんな大雪で、夜に運転なんて危ないよ」

「ゆっくり走ります。安全第一で」

そう返すと、白川おばさんは蘭へ視線を移し、複雑そうに口元を引き結んだ。

「……本当に、覚悟はできてるんだね」

今夜の白川おばさんは、必要以上に責めてこなかった。そこでようやく気づく。もしかしたら俺は、ずっと彼女を誤解していたのかもしれない。

蘭が子どもの頃、夜中に熱を出して、枕元で一晩中まぶたも閉じずに見守っていたのは――いつだっ...

ログインして続きを読む