99、
後藤正樹視点
「……悪い」
俺は声を落として言った。いつもより掠れて、自分でも驚くほどだ。
少し距離を取ろうとした瞬間、彼女が逆に俺の腕を押さえつける。
「動かないで」
鼻にかかった、かすかな声。
「このまま……少しだけ、抱いてて」
喉仏が、ごくりと上下した。
白川蘭が、こんな言い方をすることは滅多にない。まして、意識がはっきりしているときに。
普段の彼女は、どこか他人行儀な抑制をまとっている。薄い盾みたいに。
けれど今、その盾にひびが入った。
長いこと奥に隠してきた渇きが、そこから覗いてしまった気がした。
俺はもう退かない。むしろ腕に力を込め、彼女の身体を丸ごと抱き...
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