第5章

【江里花の視点】

「今、空港にいる」

 私は淡々と告げた。

 電話の向こうで数秒の沈黙があり、やがて文広の信じられないといった声が響いた。

「空港? 空港で何をしてるんだ? 江里花、いったい何を考えてるんだ!」

 その響きには明らかな焦燥が混じっていた。彼がこれほど取り乱すのを聞くのは初めてのことだ。だが今の私にとって、そんなことはどうでもよかった。

「荷物を送ったわ」

 私は彼の言葉を遮り、変わらぬ平坦な声で続けた。

「受け取ってね」

「荷物って何だ? おい、江里花、お前——」

 通話を切り、スマートフォンの電源を落とす。

 出発ゲートから、搭乗開始を知らせるアナウン...

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