第7章

【文広の視点】

 その夜、俺は浴びるように酒を飲んだ。ボトルを次から次へと空け、ただ泥酔したかった。何もかも忘れてしまいたかったのだ。だが、飲めば飲むほど意識は冴え渡り、江里花の顔が脳裏に焼き付いて離れない。

 翌朝、鳴り響くインターホンの音。

 麻耶美の声だった。

「文広、開けて! ずっと電話に出ないから、一人ですごく怖くて……」

 ドアを開けると、俺は無言で引き出しから小切手帳を取り出した。サラサラと金額を書き込み、一枚破って彼女に突きつける。

 小切手に書かれた『五十万』という数字を見て、麻耶美は顔色を変えた。

「これ、どういうこと?」

「終わりだ」

 極めて平坦な声...

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