第5章

夏目結奈視点

二ヶ月後。

私は明茂大学の図書館の入り口で、一条蒼真が白い薔薇の花束を抱えてこちらへ急いでくるのを見ていた。周りの女の子たちが羨ましそうな視線を送り、何人かはスマホを取り出して写真を撮っている。

彼は少し息を切らしながら花束を私に手渡し、ごく自然に私の頬へ柔らかいキスを落とした。

完璧。

私は心の中で彼の演技に満点をつけた。この二ヶ月で、一条蒼真は細部に至るまで私と完璧に歩調を合わせることを覚えた。図書館で勉強するときは手を繋ぎ、カフェではチーズケーキを分け合い、キャンパスのあちこちで抱きしめ合ってキスをする。まるで熱烈に愛し合っている恋人同士のように。

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