第8章

夏目結奈視点

「結城隼人」

私は彼の名前を直接呼んだ。思ったよりも冷たく、硬い声が出た。

彼はその黒い瞳が私を捉えるが、そこには何の温度も宿っていない。

「何だ」

私の中の炎が燃え上がり始めた。

「気にしないなら、今すぐ私と一条蒼真を祝福しなさい。すぐに結婚式を準備して」

彼は冷たい笑みを漏らした。

「夏目結奈、その男が相応しいと本気で思っているのか?」

私の声が大きくなる。怒りがこみ上げてきた。

「どこが私に相応しくないって言うの?」

結城隼人はついに立ち寄った。その長身が見下ろす形になる。だけど、私は引かなかった。今、引くわけにはいかない。

「破産し...

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