第6章
有栖川礼希視点
その言葉は、剥き出しの電線のように、危うい緊張をはらんで私たちの間に存在していた。
私の、愛しい人。
成宮涼は、そこに立っていた。六年間も彼を苦しめてきた秘密を打ち明けたばかりで、無防備で、怯えきっていた。胸が急速に上下し、その目は私の顔に嫌悪や恐怖、あるいはもっと最悪な――憐れみの色を探している。
だが、彼が見つけたのは、予期していたものとは違った。
「成宮涼」
私は離れるどころか一歩近づき、そっと呼びかけた。
彼はまるで殴られるかのように身をすくめた。
「礼希、やめてくれ――」
「私は、眠ってなかった」
その言葉は、静かなアトリエに爆弾...
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