第8章

有栖川礼希視点

「どこに行ってたんだ?」

成宮涼が尋ねた。

「カフェだよ」

私は疲れ果ててソファに崩れ落ちた。

「噂が広まってる。近所の人が、私たちのことを話してるんだ」

成宮涼は拳を握りしめた。

「何を言ってた?」

午後の出来事を彼に話した。詳細を語るにつれ、彼の表情がみるみるうちに険しくなっていくのがわかった。

「遠野真一からも電話があった」と成宮涼が言った。

「俺のギャラリー展示会を中断するそうだ。『提携関係を見直す必要がある』だとさ」

私の血の気が引いた。

「涼、ごめん……」

「違う」

彼は私の言葉を遮り、アトリエへと向かった。

「君が謝る...

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