第76章 言語道断

九条綾は両の拳を固く握りしめた。顔は怒りで紅潮しているが、目の前の数人の使用人たちが哀願するような表情を浮かべているのを見ると、足が鉛のように重くなる。

彼女は情に厚い人間だ。そうでなければ、十年間も一人の人間に想いを寄せ続けたりはしない。

この三年の結婚生活、三満は毎日彼女に寄り添ってくれた。綾はずっと前から、彼女を身内のように思っていたのだ。

「奥様、申し訳ございません。私たちは……」

九条綾は目を閉じ、手を振ってその言葉を遮った。

「分かっているわ。あなたたちを責めたりしない。私が出ていけばいいだけの話よ」

「ありがとうございます、奥様。本当にお優しい方です」

彼女たちも...

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