第16章:すべての財産を放棄する

エマ視点

サリーの足が今にも私の腹を蹴り上げようとした、その瞬間だった。ひとりの男が脇から突然駆け込んできた。

「離れろ!」

クラウスだった。

片手で私をかばい、もう片方の手で嫌悪をあらわにサリーを突き飛ばすと、彼女はそのまま地面に転がった。

「痛っ!」

サリーは悲鳴を上げ、尻を押さえた。

だが相手がクラウスだとわかった途端、その顔に浮かんでいた怒りは一瞬で媚びた笑みに変わった。

クラウスはポケットから小切手を引き抜くと、サリーの顔めがけて放った。

「金を受け取って、二度と俺の前に現れるな。もう一度でも姿を見せたら許さない」

その声は氷のように冷たく、感情のかけらもなかった...

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