第163話近いけど遠い

三人称視点

ソレンという名が、彼女の胸を容赦なく貫いた。

エマは硬直したまま、スマートフォンの画面に表示されたデータを見つめた。

「エマ」

ジャスティンは携帯をしまい、彼女の目を正面から捉えた。「捜索隊は引き揚げさせない。ムーンリバーの精鋭を五十人、この場所に残す。家々を一軒ずつ回って、考え得る場所を全部確かめるまで続けさせる。彼がここにいるなら、必ず見つける」

彼は言葉を切り、声の角をほんの少し落とした。「だが、ソレンはいま救急室だ。君に戻ってきてほしい。命を救ってやってくれ」

エマの瞳に宿っていた獣じみた焦燥が、すっと薄れた。

理性が、じわじわと戻ってくる。

気づけばエマは、乾い...

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