第6章

善明視点

 私は、魂が抜けたような足取りで屋敷のホールへと入った。

 リビングから、ひそひそとした話し声が漏れ聞こえてくる。

 私は思わず足を止めた。

「次はもっと大きな声で嫌がるのよ、時雄」

 遥香の声は低く抑えられ、どこか粘りつくような甘い誘惑を孕んでいた。

「あの女が話しかけてきたら、悲鳴を上げるの。大っ嫌いだって叫んで、大騒ぎして、みんなにあの女の恥ずかしい姿を見せつけてやるのよ」

「でも……」時雄の声は弱々しく、躊躇いが滲んでいる。

「パパは、もうママを怒らせちゃダメだって。仲良くしなきゃいけないって言ってたよ」

「あら、いい子ね。でもパパは建前でそう言ってるだけ...

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