第119章

黒川颯は彼女に押され、少しだけ思考がはっきりしてきた。

「明日、俺と一緒に帰るぞ」

彼はもう一度念を押した。

伊井瀬奈は今や、毛を撫でつけられた猫のようにおとなしく、素直に頷いた。

「うん」

その声は細く、柔らかい。

次の瞬間、黒川颯は再び彼女にキスを落とした。

「颯、颯……」

黒川颯は彼女の唇を軽く噛んだ。記憶力の悪さを罰するためだ。彼は何度も、何度も『旦那様』と呼べと強調したのに、彼女はまだ覚えていない。

「瀬奈、『旦那様』と呼べ!」

「あ、あなた、起きて。コンドームがもうないの」

伊井瀬奈は絶好の口実を思いついた。別荘の近くにはコンビニがほとんどなく、買いに行くの...

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