第145章

伊井瀬奈は羽鳥汐里から差し出された水に目をやり、内心で毒づいた。誰を馬鹿だと思っているのか。

「あなたが私のことを本当のお姉さんみたいに思ってくれてるなら、私もあなたのことを邪険にはしないわ。あなたの持ってるその水の方が美味しそうだから、交換しない?」

その言葉に、羽鳥汐里は一瞬固まったが、すぐに我に返った。

「お姉さん、この二つの水は同じものですよ。どちらもレモン水です。私のはさっき飲んでしまったので……交換したくないわけじゃないんです。最近ちょっと風邪気味で、お姉さんにうつしちゃうといけないから」

伊井瀬奈の視線が数秒間、羽鳥汐里に突き刺さる。見つめられた方は、心臓が縮み上がる思...

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