第195章 私はもううんざりだ、お願いだから私を解放して

「瀬奈、少しだけ時間をくれないか?」

 黒川颯は充血した目で、低姿勢に尋ねた。

 伊井瀬奈は口角を上げたが、その笑みは目に届いていない。

「一つだけ聞きたいの。あなたたちの時間は取らせないわ。返事さえくれれば、すぐに帰るから」

 羽鳥業成は彼女が騒ぎ立てるつもりがないと見て、もう止めようとはせず、肩の力を抜いた。

 『あなたたち』という一言が、黒川颯の胸を締め付けた。やはり彼女は気にしているのだ。

 彼は中から出てくると、彼女のそばへ歩み寄り、その手を握ろうとした。伊井瀬奈はさっと手を引っ込め、二人の関係は再び氷点下に戻った。

 黒川颯は、今度こそ完全に彼女を失ってしまうと感じ...

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