第217章 誰かが彼の妹を追いたい

 黒川颯は切れ長の目を細めただけで、それ以上は何も言わなかった。彼が向かうのはS市で最高級のホテルだ。陸上睦月のような気取った若様がそこに泊まるのも道理だろう。

 車はすぐに集浦ホテルに到着した。武藤拓真の家が経営する五つ星のホテルチェーンで、黒川颯はA級VIP会員であり、固定の部屋と専用駐車スペースが与えられている。

 神谷竜也が車を寄せ、角を曲がる直前に、前の車がホテルの手前にあるレストランで停車するのが視界の隅に入った。社長からは陸上睦月と挨拶する必要はないと指示されていたので、それ以上は気にせず、そのまま駐車した。

 一方、陸上睦月は車を停めると、伊井瀬奈の側へ回ってドアを開け...

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