第218章 逃す

さすがは実家がメディア会社というだけあって、陸上睦月の演技は実に巧みだった。体重の半分を伊井真に預けている。

伊井真は、この男が妹にまとわりつくのを恐れていなければ、本当にゴミ箱に叩き込んでやりたいところだった。

集浦ホテルまでの数百メートルの距離を、陸上睦月という厄介者のせいで二十分近くもかけて歩かされた。伊井真がこれほど人に尽くしたことがあっただろうか。彼の忍耐は、陸上睦月に付き添ってホテルのフロントまでたどり着くのが限界だった。

伊井真の顔はどこへ行っても知られており、サービスのスタッフはこの有名人がひどく不機嫌な顔で酔っ払いを支えているのを見て、慌てて駆け寄ってきた。

「伊井...

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