第221章 凡宝は黒川ビルに入る

 車は黒川ビル付近まで来ると、伊井瀧が叫んだ。

「高遠おじさん、もっとゆっくり!」

 高遠大志はすでに車の速度を最低まで落としていたが、この小さな坊やはまだ速すぎると感じているようだ。

「もっとゆっくり!」

 その頃、黒川颯は夜に会食の予定があった。今日は偶然にも会社のエレベーターがメンテナンス中で、彼はビルを出て、神谷竜也が車を回してくるのを待っていた。

 伊井真はふと車の外に目をやった。ちょうど、すらりとした長身の黒川颯がそこに立っているのが見えた。彼はしきりに腕時計に目を落としており、急いでいる様子だった。

 彼はぎくりとし、二人の子供に目を向ける。伊井月はイチゴのクマのぬ...

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